和歌山県立医科大学とエクサウィザーズなど小細胞肺がんの免疫治療効果を予測する画像AIモデル開発

~世界最大級のがん関連国際学会ASCO2023で発表~

365体育app5年6月8日

発表内容

和歌山県立医科大学内科学第3講座(教授 山本信之)の講師 藤本大智らを中心とした全国32施設からなる肺がん診療施設の共同研究グループと、株式会社エクサウィザーズ(東京都港区、代表取締役社長:春田 真)は、進展型小細胞肺がんの患者の病理画像と患者背景情報から、免疫チェックポイント阻害薬の長期効果を予測するAIの機械学習モデルを開発する研究を実施しました。本研究により、機械学習を用いた病理画像と患者の背景情報を解析することで、小細胞肺がんに対する免疫治療の長期効果を予測できる可能性が示唆されました。

本研究成果は、和歌山県立医科大学内科学第3講座の柴木亮太 学内助教らによって世界最大級のがん関連国際学会であるASCO(American Society of Clinical Oncology:米国臨床腫瘍学会)の年次集会ASCO2023(現地時間2023年6月2日-6日)において発表されました。

発表演題: Pathological images machine learning and prediction of long-term efficacy for immunotherapy in small cell lung cancer.

抄録番号: 8578

抄録リンク: https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/223103このリンクは別ウィンドウで開きます

本研究の背景

肺がんは、がん関連死の主な原因の一つであり、特に肺がん全体の約15%を占める小細胞肺がんは、急速な増殖、早期から転移がみられ、予後が非常に悪いことが知られています。進展型小細胞肺がんの治療として化学療法と免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)の併用が推奨されております。しかしながら、免疫チェックポイント阻害薬の強みである長期的な治療効果は10?20%でしか認められず、現時点では有効性を予測するバイオマーカーが存在しないことが大きな課題となっています。

近年、免疫療法のバイオマーカーとして、腫瘍免疫微小環境(TIME)という概念が注目されています。TIMEの構成要素として、リンパ球の役割や腫瘍の局在が重要となるため、リンパ球および腫瘍細胞の位置関係を客観的に評価することが重要ですが、人が再現度高く評価を行うことは難しい状況です。

本研究の結果

本研究では、進展型小細胞肺がんのコホート研究で収集された78症例の病理画像データを用い免疫療法の長期的な有効性を予測する機械学習モデルの開発可能性を検討しました。また、TIMEのバイオマーカーとしての有用性を臨床現場で検討する際の課題として、患者背景がTIMEや免疫療法の効果に影響を与えることが挙げられることを踏まえ、1,2 病理画像と患者背景情報(構造化データ)の双方を用いた機械学習モデルを検討しました。

その結果、後者の病理画像と患者情報を用いた機械学習モデルは、治療開始後365日時点での無増悪生存(がんが進行せず安定している状態)の達成を予測することができ、機械学習モデルによる分類で高い治療効果が予測された群は、低い治療効果が予測された群と比較して無増悪生存時間を延長したことが確認できました。

本試験を主導した和歌山県立医科大学内科学第3講座の柴木亮太医師は、「小細胞肺がんは現段階で有用な治療効果予測のバイオマーカーが存在しません。我々が検討した病理画像と患者情報を用いた機械学習モデルによって、今後、治療効果が期待できる症例を高精度に予測できる可能性や、TIMEがバイオマーカーとなりうることが示唆されたことが有用です」としています。

今後は本研究成果をもとに小細胞肺がん患者に適切な医療を届けるため、本機械学習技術の実用化に向け推進していきます。


<引用文献>

1.Shaw A. C., Goldstein D. R., Montgomery R. R. Age-dependent dysregulation of innate immunity. Nature reviews. Immunology 13, 875-887 (2013).

2.Hooper L. V., Littman D. R., Macpherson A. J. Interactions between the microbiota and the immune system. Science (New York, N.Y.) 336, 1268-1273 (2012).

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